累犯障害者 - 獄の中の不条理 / 山本 譲司

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)

 

テーマは重いがしっかりと書かれた本。

著者はかつて国会議員を二期すごし、そののち不祥事を起こして一年半の実刑を受け刑務所に収監されていた経歴をもつ。
そのあいだ担当していたのが、障害者の受刑者のケアの仕事。知的障害者、聾唖者、etc..彼らには犯罪が犯罪なのかわからないもの、あるいは一般社会が暮らすには厳しすぎ、(判断能力不足も手伝って)再度の刑務所暮らしをどうしても志望してしまう、刑務所以外に受け入れてくれる場所がない、そんな理由で出所しても再び戻ってきてしまうものも多い。そんな「累犯障害者」をめぐる状況のルポルタージュ
お気軽にサマライズするのは難しいので、目次を引用します。

序章 安住の地は刑務所だった - 下関駅放火事件
第一章 レッサーパンダ帽の男 - 浅草・女子短大生刺殺事件
第二章 障害を食い物にする人々 - 宇都宮・誤認逮捕事件
第三章 生きがいはセックス - 売春する知的障害者女性たち
第四章 閉鎖社会の犯罪 - 浜松・ろうあ者不倫殺人事件
第五章 ろうあ者暴力団 - 「仲間」を狙いうちする障害者たち
終章 行き着く先はどこに - 福祉・刑務所・裁判所の問題点

著者の調査と筆致は誠実でしっかりとしたもので、かくも悲惨な、かつ一般社会やマスコミがタブーとして触れたがらない無常な領域を、ブレや迷いなく記している。ゴシップ風味やお涙頂戴浪花節的な気分になることなく、感銘をうけつつ堂々と読み進めることができる。

そう、この本に書かれている内容には、確かに一見ゴシップ的なトピックも含まれている。でもそういう興味で読み始めたっていいだろう。たいへん意欲的な一冊だとおもう。これはおすすめだ。