2008/06/21: Vienna / Ultravox
Ultravox 1980年の作品。 Midge Ure 加入でスタートした第二期 Ultravox (John Foxx 時代の Ultravox! を第一期とするなら) としてのファーストアルバム。
名盤中の名盤中の名盤中の名盤。
次のアルバム Rage in Eden も名盤中の名盤中の名盤中の名盤で、 コンセプトや完成度はこっちのほうが高いかもしれないが、 先駆性も加味するとなんとも甲乙つけがたい。 でも、この二枚に出会えただけでも生まれてきてよかったと 思える名作であることに違いはありません。 両方とも故 Conny Plank のプロデュースです。合掌。
情景描写プログレ組曲っぽい 7分の曲 Astradyne からはじまります。 静と動の構成は清らかで、 Ultravox の看板のひとつ、 Billy Currie のうにゃうにゃ唸るアープ・オデッセイのソロも 思う存分たのしめます。 Warren Cann のズタタタタタタタタ・ドラムも、 まるで黄門様が取り出す印籠のごとく炸裂してます。
New Europeans ですが、当時
三宅一生がヘリに乗って登場するサントリーのTVCFで使われてまして。
ディストーションの効いたシャープなギターのカッティングが、
まさにカッティングここにありというぐらいの格好良さ。
当時中学生だった僕は、それまでギターなんて
野蛮で工夫も何もない、音楽を汚し壊し未来を破壊する
おぞましいものだとおもっていたのですが(そもそも「ロック」とか嫌だったかも)、
このカッティングで目が開きました。ありがとうMidge.
Midge Ureのハイトーンなボーカル、Warrenの締まったドラムもいいですが、
さらにこの曲を当時斬新に、ニュー・ロマンティックの旗手たりとしていたのが
8つ打ちのMini Moogのシンセベースで、
かなりフィルタでつぶしたタイトな音はたとえようもなく骨太で格好良く、
これまたUltravoxを特徴づける看板となります。
後半のリフっぽいギターソロのあとで入る
YAMAHA CS-80の薄く冷たいシンセストリングスと低い低音の矩形波、
そして最後に押し寄せる欧州の哀愁のアコピの波状攻撃には、
全身が鳥肌で皮膚癌になってしまいそうです。
続く Private Lives からのA面3曲は、 中学生当時は良さがあまりわかりませんでしたが、 ポスト・パンクから次にいこうとする試みの熱さ冷たさが 大人になってみるととても良いです。 Passing Strangers とか、メロディが結構演歌っぽいというか テイチク入ってるんですが、Ultravox って実はほかもけっこうそうなんですよね。 歌詞もぜんぶ欧州の没落と哀愁を舞台にした演歌調で、 たぶん丹まさとが富士そばをヨーロッパ展開していたら、 作詞担当としてUltravoxの5人目のメンバーとなっていたことでしょう。 Sleepwalk も哀愁なのやらトッポイのやら、曲調がいまいちよくわかりません。
そしてB面に突入すると、 彼らの音楽性と先駆性はさらに異次元に突入します。 といってもCDとかiTunes StoreとかだとA面B面がわかりません。 このようなアルバムにとって、これは非常に不幸なことです。
B面1曲目のMr. Xですが、 欧州の哀愁からさらに少し不気味方面に一歩踏み込んでいます。 ベタな Roland TR-808 ドラムから、 TR-808 のトリガによって駆動される Mini Moog の、 キレ良く図太い矩形波ベースの涅槃にすべてが圧倒されます。
けっこうタメを入れたトリガーパターンでずっと行って、
サビ(?)で8連連打のオクターブ・パターンに移るそのカタルシスは、
頼むからひと思いに俺をいますぐ殺してくれというぐらいの
気持ちよさです。
たぶん、タメてじらせておいて、ここぞで一気にツボを味あわせ、
ああやめてもうダメというところに持っていき、
(しかし満足はさせず適宜出し惜しみしてもう一回聴きたくさせる)
のが作曲と見つけたり、というのを僕が知ったのはこの曲です。
ヴォーカルというかボソボソとした詠唱をしている低い声は ドラム担当の Warren Cann です。 1982年ごろ彼らが来日したとき 中野サンプラザに行ったのですが (たしか自分でちゃんとコンサートというものにいった初体験だったかも!)、 ドラムセットから降りて、脇のミニモーグとTR-808のセットに向かい キーを押さえながらぼそぼそ語るウォーレンを見て感激で首を吊りそうになりました。 そのときは、ごくまれに16分のバリバリブンブンというオカズも入れていました。 思い出すだけで死にます。
そしてさらに、Billy Currieの哀愁と屈折のヴァイオリンがエフェクトかまして 割り込んでくるのですが、もうこれは文字なんかでは素晴らしさを書けません。
Mr. Xの終わりから、シンセ・シーケンスの流れでメドレーで次の Western Promise に続きます。このイントロや、次の Vienna に続く部分も 当時はFMラジオのジングルなどに良く使われてました。 これはちょっと斜にかまえた妙な曲で、哀愁は姿を消し、 そこにあるのはむしろシニカルなユーモアと、とっぽい格好良さです。
そしてそのままメドレーで、アルバムタイトル曲でもあり、 20世紀が誇る名曲といえる Vienna に続きます。 哀愁とロマン、清らかさとオルタネイティブさ、スケールとアイディア、 静と動、すべてを併せ持っています。 TR-808, Mini Moog ベース, Midge Ure のハイトーン・ヴォーカルとコーラス、 CS-80のストリングス、Billyのアコースティック・ピアノとヴァイオリン、 すべてが完璧です。 とくに後半のヴァイオリン部分のミニモーグのベースの 微妙なモタりとツッコみは、いったいどうやって調整してるんでしょうね。 あまりの素晴らしさと、それによってもたらされる脳の動きやら 分泌やら身体の異状を通して、自分の寿命が確実に縮まっていくのを感じます。 自分が死ぬことになったら、 その前の30分ぐらいに聴きたい3曲ぐらいのひとつです。
Viennaの素晴らしさの余韻を残したままアルバムを終えてしまうと、 ほんとにリスナーは寿命が縮まったままレコードの針が戻ってしまうので、 最後の曲はちょっとベタなポスト・パンク路線の All Stood Still です。ちょうど、映画の最後のスタッフロールのような 役割を果たしていると思います。
とりあえず Vienna のプロモビデオを YouTube から貼っておきます。
それまで楽曲のプロモビデオというものは、
ニーチャンやネーチャンがズンタカ演奏してるさまを
たんに撮影しましたヨ、というものしかありませんでしたが、
Vienna のビデオは、
ストーリー性のある、鑑賞に値するプロモビデオというものの
はしりだと思います。

