2008/06/17: 最後の伝令 / 筒井康隆
短編集。
「人喰人種」 「北極王」 「樹木 法廷に立つ」 「タマゴアゲハのいる里」 「近づいてくる時計」 「九死虫」 「公衆排尿協会」 「あのふたり様子が変」 「禽獣」 「最後の伝令」 「ムロジェクに感謝」 「二度死んだ少年の記録」 「十五歳までの名詞による自叙伝」 「瀕死の舞台」
書名にもなっている「最後の伝令」は、 (ああ、陳腐な表現だけど) 「ミクロの決死圏」ネタを筒井風に料理した感じで、 「小隊長」から「エロチック街道」あたりの筒井作品も割と好きな僕には わるくなかった。
が、最後にあたまをがんとやられたのが 「瀕死の舞台」
演劇場で老衰した役者が立てなくなってしまい、 寿命もわずか。ならばそのまま舞台に出し続けたほうが 本人の気力にもなって。 という、もういつ死ぬかわからない老人を交えた劇の興行の話。 途中で老人のモノローグになってから最後にいたるまで、 シンプルな話なんだけども、もともと役者を志していた著者の 演劇に対する熱くてあったかい気持ちの入りかた、 しかし冷静な客体としての報告者でもある文体、 そんなこんなで、短編なのに、なぜかわからないが 鳥肌がたって猛烈に感動した。なぜ感動しているのかよくわからないのだが。 エンターテインメントでもあり、 アバンギャルドでもあり、 クールでもありヒューマンでもあり、 まあそんなカタカナなど並べていないで、 個人的に2008年読んだもののベスト1候補はおそらくこの一編。
2008/06/15: 続 獄窓記 / 山本 譲司
先日読んだ「累犯障害者 - 獄の中の不条理」 を書く前の、しかし獄中記である「獄窓記」の後記になる一冊。 出所してからの鬱、迷い、そして「獄窓記」を書き出版し、 しだいに虞犯精神障害者のケアはじめアクションに動いていくあたりを記されている。
内容は重いのだが、自分の迷いや弱さも含めてしっかりした筆致で進めるそれが 一種の「強い重さ」になって、最後まで一気に読ませる。 またひとつの私小説としてもしっかりと味わえる。ぜひお勧めの一冊。
2008/06/15: ラブホテル進化論 / 金 益見
日本独自の文化らしいラブホテルについて調べてまとめた本。 まじめかつ面白くまとめてある一冊。
いろいろ面白かった。
渋谷の円山町にラブホテルが多いのは、 ダム建設で村が水没した岐阜は白川村のひとたちが、 上京して渋谷近辺で四畳半旅館を営み始めたのが起源。 いまでも名前に川のつくホテルが円山町に多いのはその名残。
僕は自動車で(ときに一人で)どんどん旅行するのが好きなのだけど、
「クルマでぱっと入って、寝るだけ寝れる」
という、本来の「モーテル」が日本にはないなあと思ったら,
法で規制されているのか。
ワンルーム・ワンガレージ式のモーテルは禁止されているのだそうだ。
自動車旅行者からするととても便利なんですがね。
ただ、いちおうホテルとしての敷地があり、受付があって、
その上で敷地内に
ワンルーム・ワンガレージ式の建物が並んでいるぶんにはいいらしい
(僕もこの手のなら覚えている - ラブホテル利用のほうにおいて)。
著者はまだ若い可愛い女性で、大学の卒論として研究を始めたようだ。
のびのびと書いていてなかなか良い。
(ちょっとヘタウマなイラストも彼女自筆)
1979年うまれらしく、僕のひとまわり下になる。
ラブホテルのネーミングスキームについて考察しているあたりで、
80年代後期から90年代ぐらいにかけて、
やたら西暦な名前(1987とかHotel 1992とか)
が頻出した一時期がこの本では触れられていないのだが、
ちょうど世代の違いで、ぽっかり抜けてしまったのかな?
と思った。それとも東京だけの現象だったのかな?
新風営法が発足したのが1985年なので、 それに伴い違法となり廃止された、大昔のラブホテルの象徴であった「回転ベッド」は、 残念ながら1967年生まれの僕は現物をみたことがない。
ほかにも、
ホテルとしてはフロントでの人間の介在が法的には必要なので、
自動支払機の存在はとりようによってはグレーなこと。
僕の年代だと、
終わりごろに電話をかけ・かかってきてフロントで清算、がまだおおく、
(あっさっき終わりました! とかいっちゃうんだよね)
部屋の写真とかボタンが一緒で押すとキーが出てくるタイプのは
まだ半分ぐらいだったかな。
たしかにエアー・シューターもいくつかみかけたが、
ボタンをおしても気配がせず、
そしたらオバサンがすいません壊れてましてねと
ピンポンしてやってくるのもありがちなパターンだったかも。
ばあさんが四畳半に布団を敷きにくるしょうもない
クラシックなやつも滋味深くてなつかしい。
ワンルーム・ワンガレージのタイプも日本の田舎ドライブの風物だけど、 一度、消灯後に空気が霧のようになまぐさくなり、 室内の音や鏡などがなにかヘンで、 霊感などまったくない私でも「これは室内に絶対何かいる」 と100%確信をもったことがあり、それ以来いい印象がない。
逆に「これからのラブホテル」像もおもしろい。
景色や食事や、海をみながらふたりでゆったりお風呂とか、
ゲームとか、もちろんセックスもするだろうけど、
ふたりでたのしい時間をすごすもろもろのアメニティをたのしむ場所という
位置づけはたのしそうだし、
いってきた若い子が、きょうはここ行ってきました!
と、PCブログとかケータイブログとか、はたまたmixiとかから
トラックバックやブックマークして盛り上がるとか、
そういう方向もすごくたのしそうだ。(はいはいリア充ですね)
そんなこんなで、ぱっと読めるのでひまつぶしにもおすすめ。
2008/06/15: 最後の喫煙者-自選ドタバタ傑作集〈1〉 / 筒井 康隆
これも二十年ぶりぐらいに読んだ作品群。
所収作品は「急流」「問題外科」「最後の喫煙者」「老境のターザン」
「こぶ天才」「ヤマザキ」「喪失の日」「平行世界」「万永元年のラグビー」
で、いずれも懐かしい。
むかしも同様の作品群が収められたものを読んだ気がするのだが、
以前でていた短編集の題名を変更した一冊なのか、
それとも新たに編まれたアンソロジーなのかは、わからない。
なかでも好きなのは 「こぶ天才」「ヤマザキ」「喪失の日」「万永元年のラグビー」 あたりかな。






