Waterline / A Certain Ratio

A Certain Ratioの1981年のシングル。

ACRは、ポスト・パンクの系譜のなかで, Factory レーベルの中ではファンクというかフュージョン的な位置づけからスタートしたバンドだが、この一枚でも、ラテン・パーカッションに加え、ベースのスラップやチョッパーがかなりグルーブしている。

しているんだけど、低音をばっさり切ったイコライジングもさることながら、「まったく汗をかかない不気味なファンク」なのである。むしろこの曲Waterlineでは、へんな女声ヴォーカルやヴォコーダーが無調性で、同じく不安な持続電子音、そして電子ノイズとハウリングとLFOだけになるエンディングなど、リゲティの「アトモスフェール」ぐらい冷たく不気味。

そう、「2001年宇宙の旅」の木星軌道に漂うモノリスぐらい不気味に冷たいファンクなのである。これは、もう、脳の中心からやられる、熱いんだけど絶対零度のファンク、静かなる狂気、衝撃の中毒性だ。 

このシングル (12インチ) は、2日周期ぐらいで新宿〜お茶の水ルートでマニアックな古レコード屋のローテーションを任務としていた東京の高校生だった僕でも、数回見かけただけのレアな一枚だ。西新宿の新宿レコードだったかな? レコードとしては結局もっておらず、当時NHK-FMでやっていた坂本龍一「サウンドストリート」でエア・チェックしたのが唯一の所有ソースだった。

日が移り、世にはインターネットなんてものができてきて、

さらになんとインターネットで音声もやりとりできるようになり、

さらにはなんとインターネットで動画もやりとりできるようになり、

でもこの曲はいくら探してもずっと無かったのだけれど、

先日発見してしまった。 

29年ぶり。もう結構明日ぐらいに死んじゃってもいいや… という感じです。

 

 

Waterline / A Certain Ratioの、Factory RecordでのカタログナンバーはFAC 52.

FAC 50はNew Orderの 1st 'Movement', そしてFAC 51は、あの伝説のFactoryのクラブ 'Hacienda' なのです (ファクトリーは、レコードに限らず、作成したロゴとか店とかにもいちいちカタログナンバーが付いている)

1981年というと、YMOのBGMとか、Japanの錻力の太鼓とか、思いを馳せるだけで、頭のなかがじーんと遠くにトリップしてしまうあたりです。現世さよなら。