ジョゼと虎と魚たち

田辺聖子原作、妻夫木聡と池脇千鶴主演の映画。

いままで観ていなかったのは、「ジョゼと虎と魚たち」というタイトルに対して、きっと障害者がイケメンと恋をするコジャレな感動映画なんでしょうね、はいはいお疲れさま。という先入観を持っていたため。

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最初のほうは、大阪の底辺の体温が濃厚に迫ってきて、生理的にどうもダメだった。
以前から田辺聖子作品とか「じゃりン子チエ」的なものが苦手なのだ。

これは俺が関東人だからなのかな、しかし俺はつげ義春とかは好むじゃないか、だとすると対偶としてつげが苦手な関西人というのもあるのかな、とか思っているうち、俄然良くなってきた。

池脇千鶴、かなり良い。
感情をつぶした不具の娘を淡々と鬼気迫り演じるさまはなかなか素晴らしい。
「淡々と」「鬼気迫り」なんてなかなかできないですよ。役者として見直した。

上野樹里もいい。というか、みんなきちんと抑制された演技でいい。逆にいうと話の筋とか障害者である設定とかは、この映画の心的情景を醸し出すための大道具・小道具・セットであるから、役者たちのさまを味わえばよい。とても映画らしい映画で、かなり満足した。

ただ、この映画を仮に西川美和が監督していたら、さらにどんなに凄い映画になっただろうとも考えてしまった。ないものねだりです。ごめんなさい。